《出逢いの記録》

kun坊

2009年04月02日 08:49

 
 またまた調子に乗って「釣行記」を書きました。

 まぁ、いつものように大げさな表現がココカシコ・・・


 サクラマス釣りをしたことの無い人に、

 「へぇ~、こんな感じなんだぁ~?」と、ほんの少しでも、

 伝えることができたなら、とても嬉しいです。


 
『 サクラマス釣行記 』 《 出逢いの十九 》




朝駆け釣行で結果を出せなかった私は、
2月7日の初ヒットから、既に20回の釣行を重ねていた。
今日は土曜日。
午前中の仕事を終えてから再度の挑戦である。
昼前に「KENちゃん」から同行するとの連絡が来て、
昼過ぎには私の家で待ち合わせ、
道中はお互いに沢山の話をしながらメインポイントへと向かった。

現場に着いて、ひと通り眺めてみると何箇所か空いている。
強風の中、空いているポイントへと入り一心不乱にロッドを絞る。
さぁ、本日の二回戦目が始まった・・・

定番のスプーンポイント、
深度のあるミノーポイント、
集中力を切らさないようにとルアーを替え、
そして気持ちを切り替えるためにポイントを替える。
持てる知識と経験の全てをさらけ出して、
かつてのヒットイメージを再現させるべくロッドとルアーを操る。

しかし、何度も何度もそのドアをノックしてみても、
奇跡の扉が開かれるのは稀だ。

途中で「かがわさん」「kuroちゃん」が合流。


それから数時間、精も根も尽きるほどに、
水中を通してきたルアー達は、出逢う相手も無く手元へと戻ってきた。

今日は、夕方からの用事を控えて、
4時半には川上がりをしなければならなかった。
最後のポイントを、今期の当たりポイント付近にと決めて、
「KENちゃん」と上下流に分かれて入った。

それが、前兆というわけでは無かったと思うのだが、
4時に近くなって、あれほど強く吹いていた風が邪魔にならないほどに収まり、
そして、雲に隠れていた太陽が時折顔を覗かせた。

私は、根拠も無く「KENちゃん」に声を掛けていた。
「何だか、いやに穏やかになって・・・出るんじゃないかな?」
「もうそろそろ、上がんねげねぇんでねの?」
「うん、もう4時12分だから30分までだね!」
「オレは、いつでもいいですよ!」
もうすっかり、集中力を欠いて、
ただただ真正面にキャストして、ボトムまで落として、そしてリトリーブ・・・。
スプーンがターンして、巻き取りの距離が半分を過ぎ、
流れとラインの角度が45度ほどになったころ・・・

突然! ロッドティップが下流方向にグイッ!と引っ張られた!
思わず、ロッドを持っていかれないようにと、
ロッドエンドを腰に当てて踏ん張る。

すると、ジジジィーーー! とドラグが鳴って、
次にグンッ!グンッ!グンッ! とサクラマス特有の魚信が伝わってきた。
思わず、テンションを保ったままグイッと合わせを入れていた。

ズンッ!と益々ロッドに重さが増す。
押しの強い流れの中で、頭を振っている〝彼女〟の重さに、
初めてサクラマスを掛けた今回のロッドが、
予想以上にバット部分から曲がっていた。

後になって考えてみれば、
アタリの出方がいつもと違うのは当たり前の事だったのだ。
何しろ、ロッドが違うのだから・・・・・

思わず、
「来た!来た!来たよ!」 と声に出していた。

最初の叩きを凌いだ後、
出来るだけ水面に出さないようにとティップを下げたまま、
ゆっくりとゆっくりと上流へ向かって引き上げる。
時折、ギュギュッ!ジジジッ!と突っ込みをみせるが、
ロッドのしなりが良い具合にテンションを保っている。

そこで、ランディングネットがまだ背中にあることに気づいた。
早速、ハンドルノブから左手を離して背中に回そうとした瞬間。
前回の〝バラシ〟の瞬間がフラッシュバックして思い出された。
右手一本で支えた瞬間にラインテンションが抜けるのでは無いか?と
とても恐くなってしまったのである。

ここは何としても獲りたい!と思った私は、
上流に居る「KENちゃん」を呼んでいた!
「ゴメン、KENちゃん!ネットを貸してくれ!」

急いで駆けつけてくれた「KENちゃん」に少し待ってもらいながら、
目の前で〝彼女〟が弱るまで、なんとか耐え無ければならない。

すると〝彼女〟は最後の賭けに出た!
突然、激しく!それは激しく!ローリングしたのである。
勿論、サクラマスのローリングを5mの目の前で見るのは初めてだ。
それは、想像していたよりも遥かに激しいものだった。
まるで、大型のドリルのようにウネリを伴った激しい回転!
残された体力の全てを搾り出すような最後の抵抗。
まさしく、命を引き換えにした「最後の賭け」

ラインが〝彼女〟の口から一直線に上流に向かっていたから、
何とか魚体に巻かれることも無く済んだのだが、
何かのタイミングでテンションが緩んでいたり・・・
悪いタイミングでロッドを切り返してしまったり・・・
あの勢いでは、身体に巻きついたラインが、
その身をズタズタに切り裂いてしまうのではないかと思えた。
そう思ったら、
ぞっとして冷や汗がでそうなほどの激しいローリングだった。

私は、左手で「KENちゃん」からネットを受け取った。
右手でロッドを高く上げて、ゆっくりとリフトアップすると、
水面に出る時に〝彼女〟はもう一度魚体を躍らせた!
派手に上がった水しぶきに、
一度ネットを入れようとしてタイミングを外した私は、
今度はじっくりとタイミングを見計らい・・・・・ネットイン!

その瞬間、
果たして、私は今まで呼吸をしていたのだろうか?
と思えるほどの大きなため息。
パンパンに張り詰めて硬くなっていた筋肉が、
とろけてしまいそうなほどにその緊張を解いてゆく。
心地よい<震え>を伴って・・・・・




平成21年 3月28日 午後4時21分

体長 56cm  体重 2.6kg


何度味わっても、
その達成感!満足感!充実感!そして幸福感には変わりが無い。

いつ釣れるとも知れない、
淡々とした釣れない時間を耐える事が出来るのは何故?
それは、その先に至福の瞬間がきっと待っていると信じられるから。

またひとつ、記憶に残るドラマが完結した。

釣り人は、
様々な場面でそのいくつものドラマを、心の中で何度も楽しむ。
自分の中で、そのドラマが色あせて価値を失ってしまわない限り、
もっと沢山のドラマを味わいたいという欲求を、
抑えることは出来ないだろう。

明日には、
もっと素晴らしい出逢いが待っているかも知れないのだから。





 最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました


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